目次
― 実は“相続が始まる前”からモヤモヤは始まっている
不動産専門FPの飯田康博(株式会社アイデザイン企画代表)です。
実は、相続で揉めるご家庭の多くは、
相続が始まる「ずっと前」から兄弟間にモヤモヤが存在しています。
- 介護の負担
- 親との同居
- 喪主の役割
- 煩雑な手続き

「なんとなく不公平だな」
「いつも自分ばかり大変だな」
そんな小さな感情が、解消されないまま積み重なり、
親御さんが亡くなった瞬間に一気に表面化するのです。
そしてその結果、
家庭裁判所で話し合うことになるご家庭のなんと約8割は、
遺産総額5,000万円以下だと言われています。
今日は、その理由を現場の事例とともにお伝えいたします。
|なぜ「お金が少ない家庭」ほど揉めるのか
「財産が多いから揉める」
多くの方がそう思っています。
しかし実際は逆です。
5,000万円以下のご家庭こそ、遺産の分割の問題が起きやすいのです。
その理由は大きく3つあります。
- 財産の中心が“自宅不動産”だから
- 事前準備がされていないケースが多いから
- 本当の原因は“積もったモヤモヤ”があるから
①財産の中心が“自宅不動産”だから
たとえば、
• 自宅不動産 3,500万円
• 預貯金 1,200万円
• その他 300万円 合計5,000万円。
都市部ではごく一般的な資産状況です。
しかし問題は、不動産はきれいに分けられないということです。
現金なら等分できます。
けれど自宅は切り分けられません。
• 売るのか
• 誰かが住み続けるのか
• 不動産をもらえない人はどうするか
ここで意見が分かれます。
そして、話し合いの場に持ち込まれるのは「不動産」ですが、実際にぶつかっているのは「感情」なのです
② 事前準備がされていないケースが多い
資産が大きいご家庭ほど、
• 遺言書
• 家族信託
• 法人化
など、計画的な対策が取られていることが多いです。
一方で、5,000万円以下のご家庭では、
• 遺言がない
• 財産の全体像を誰も知らない
• 親が何も話していない
という状況が多く見られます。
「後のことは、みんなで仲良く考えてもらえればいい」
そんな事を両親は伝え、特に準備がないまま、突然兄弟で話し合いが始まるのです。
③ 本当の原因は“積もったモヤモヤ”
私が現場で強く感じるのは、
揉める原因の多くは「単純なお金の話ではない」ということです。
相続は、「いままでの兄弟関係の総決算の場」でもあります。
|現場でよくある「モヤモヤ」—事例紹介

Case.1 親の介護を担った長女
母親の介護を5年間続けた長女。
仕事を週2,3のパートに切り替え、週に何度も実家へ通っていました。
他の兄弟は遠方で、ほとんど関わりませんでした。
母が亡くなり、財産は自宅3,000万円と預金1,000万円。
法定相続分は平等です。
そのとき長女が言いました。
「私は生活を犠牲にして介護したのに、同じ割合なんですか?」
法律では寄与分という制度がありますが、
実際に認められるハードルは高いのが現実です。
話し合いは感情的になり、最終的に調停へ。
長女が本当に欲しかったのは、
お金ではなく「感謝」だったのかもしれません。

Case.2 同居していた長男への不信感
別のご家庭では、長男が両親と同居していました。
家賃は払っていません。生活費の負担も曖昧でした。
父が亡くなり、財産は自宅4,000万円と預金500万円。
次男が言いました。
「今まで家賃分、得をしていたんじゃないの?」
長男は反論します。
「介護は俺がやっていた」
お互いに“自分のほうが負担した”と感じていました。
結果、不動産の扱いを巡って調停へ進みました。
|家庭裁判所に行く(調停に進む)のは“特別な家族”ではない
手続きを“押し付けられる人”の不満
相続手続きは想像以上に大変です。
• 戸籍収集
• 銀行解約
• 不動産名義変更
• 遺品整理
「忙しいから任せるよ」
その一言で、誰か一人に負担が集中します。
感謝があればまだ救われますが、何も言われなければ不満は蓄積します。
その感情が、分割協議で爆発するのです。
家庭裁判所に行くのは、
• 仲が悪い家族
• 大金持ち
ではありません。
むしろ、
• 普通の家庭
• 普通の兄弟
• 小さな不満を放置してきた家族
が多いのです。
相続は突然始まります。
しかし争いは、突然ではありません
|本当の対策は「生前の対話」
もちろん遺言書は大切です。
ですが、私は現場を見てきて確信しています。
本当に重要なのは、
感情が穏やかなうちの家族対話です。
• 介護の分担
• 同居の条件
• 実家の将来
• 手続きの役割分担
こういった内容を事前に話しているご家庭は、揉めにくいのです。
5,000万円以下だからこそ準備が必要です。
「うちは財産が少ないから大丈夫」
この言葉ほど危険なものはありません。
財産が少ない=分けにくい
財産が少ない=準備がされていない
財産が少ない=感情が優先される
だからこそ、準備が必要なのです。
最後に
兄弟同士なのに、裁判所で話し合う。
それは決して珍しい話ではありません。
そしてその多くは、
相続発生前からあった小さなモヤモヤの積み重ねです。
もし今、
• 介護の負担に差がある
• 実家の扱いを話していない
• 誰かに負担が集中している
そんな状況があれば、
それは「今、整えるタイミング」です。
相続あんしんパートナーズの一員として、
そして不動産専門FPとして、
ご家族が裁判所で向き合うのではなく、
食卓で穏やかに話せる未来をつくるお手伝いをいたします。
どうぞお気軽にご相談ください。
関連記事
今から始める終活のメリット|はじめての終活・生前整理
終活=“死の準備”ではない? ──「自分らしく生きるための整理」 「終活」って最...
終活とお金のリアル|はじめての終活・生前整理
老後資金の現実と備え方 平均的な老後の生活費 老後に必要な生活費は、夫婦2人で毎...
不動産の相続への備え
名義(めいぎ)ってなに? 名義とは、「この土地や家は、だれのものですよ」という名...
おひとりさまの「もしも」に備える
一人暮らしだからこそ、大切にしたい「もしもの備え」 まず大切なのは、自分のことを...
何から始める?|相続・終活
まずは「自分の今」を整理してみよう 何かを始める前に大切なのは、**“自分の今の...
